Tradition & Culture伝統と文化

伝統と文化

The Benefits of Nature and Celebrative Occations神聖な山の麓、人々の営み

石鎚山は、麓に暮らす人々の暮らしにさまざまな恵みを与えている。そしてその恵みへの感謝の気持ちは、ハレの日の大きなエネルギーとなる。石鎚山のお膝元である西条市にある石岡神社、伊曾乃神社、飯積神社、嘉母神社の4社の祭礼である「西条まつり」は、江戸時代初期には現在の形になったという。また、石鎚山を源とする名水「うちぬき」は、生活や産業に欠かせない、文字通り「命の水」として麓を潤している。石鎚山の威光は、山から里へとつながり、過去から未来へと受け継がれていくのだ。

神聖な山の麓、人々の営み
熱気に満ちる石鎚山の麓

熱気に満ちる
石鎚山の麓

「西条まつり」が開催される数日間、市内には150台以上のだんじりやみこし、太鼓台が練り歩き、鐘や太鼓を打ち鳴らしながら祭り歌が響きわたる。加茂川の川入りでは、提灯に明灯された明かりにより、彫刻が美しく浮かび上がる。祭りの主役とも言える「だんじり」に施された彫刻は、花鳥風月や武者絵などをモチーフにしており、100種類もの彫刻刀を使って立体的に仕上げている。

清流を泳ぐ、紙のこいのぼり

清流を泳ぐ、
紙のこいのぼり

いの町特産の不織布で作られた、色彩豊かなこいのぼりが泳ぐ「仁淀川 紙のこいのぼり」。毎年の初夏の風物詩として賑わいを見せる。キラキラと輝く美しい仁淀川の川面を、約300匹のこいのぼりがゆらゆらと優雅に泳ぐ様に癒やされる。このほか、川舟体験やアメゴ釣りなど、子どもたちも楽しむことができる催しがあることで、広く人気を集めている。

清らかな流れが育んだ、和紙の文化

清らかな流れが育んだ、
和紙の文化

平安時代の「延喜式」にその名が登場し、江戸時代には「土佐七色紙」として徳川幕府に献上されていた土佐和紙。その技術を学び、同じく江戸時代に農家の副業として生まれた周桑和紙。その一種でカゲロウの羽のように薄い典具貼紙は、世界の美術品の修復にも用いられていることで有名。強く美しい和紙を漉くためになくてはならないのが、美しく豊富な水。浸けたり、洗ったり、晒したりなど、各工程でたくさんの水を必要とする和紙は、石鎚山が育んだ文化そのものなのだ。


Festivals which Originated Ishizuchi Syugen石鎚修験がルーツとされる祭事

山麓には、石鎚修験者が伝えたとされる祭があり、彼らは自らの修験の文化を各地に広げていったという言い伝えがある。白雪がちらりと舞い落ちる季節、鎮守の森に鳴り響く「本川神楽」がその一つ。国の無形民俗文化財に指定されている高知県の伝統芸能だ。室町時代から続く神秘的な「夜神楽」は、木こりや般若などの面を付けて闇夜を舞う姿が見もの。当時、村中安全や無病息災などの祈祷の中にいくつかの舞があり、これが本川神楽の原型とされる。

石鎚修験がルーツとされる祭事
石鎚修験がルーツとされる祭事

石鎚山頂にはまだ雪が残る4月、麓にある石鎚神社本社では桜の花が開き、「春季例大祭(桜まつり)」が始まる。生き物たちが冬の寒さから目覚め躍動する季節に、自然の恵みに感謝し、それを広く正しく授かるようにと祈願する祭典だ。高知県いの町では、土佐の三大祭りの一つである「大国祭(春まつり)」が開かれ、椙本神社は県内外から訪れた約十万人の参拝客によって賑わいを見せる。


Benefits from Uchinuki「うちぬき」その清冽な水が潤すもの

西条市内を歩いていると、あちこちで出会える「うちぬき」。畑の中にさえ泉があり、農家さんはここで採れたての野菜を洗っている。また水飲み場では、手ですくって喉を潤し、水筒に入れて持ち帰る人の姿も。「うちぬき」が湧出する公園や散策路は、市民の憩いの場として親しまれている。もちろん西条市の米や野菜は「うちぬき」育ちで、酒や豆腐、菓子など、さまざまな加工品も「うちぬき」で仕込んだものがほとんど。

「うちぬき」その清冽な水が潤すもの

石鎚山の麓の地下水は、あまりにも豊富な水量を誇っていることから、かつては地面に鉄の杭を打ち込んで、くり抜いた竹を差し込むだけで水が湧き出ていた。そこから「うちぬき」と呼ばれるようになったとの説がある。現在、西条市内には確認されているだけで3000本の「うちぬき」があり、1日に約9万㎥も自噴している。四季を通じて温度変化が少ない「うちぬき」は、天然の美味しい水として評価も高く、街の観光資源となっている。

「うちぬき」その清冽な水が潤すもの
「うちぬき」その清冽な水が潤すもの

1年を通して温度がほぼ一定な石鎚山の伏流水を、人々は古くからさまざまな方法で活用してきた。名水なくしては成し得ない上質な酒造りは、「うちぬき」がもたらす代表的な恩恵の一つ。石鎚を見上げる西条市内は、冬は霊山より寒風が吹き下ろし、四国を代表する穀倉地帯でもある。ひときわ恵まれた水と気候と米。そこに酒造り一筋に歩んできた技術と熱意が加わり、きりりと淡麗な味わいの酒が生まれる。